拡張現実

出典: フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』
移動先: 案内、 検索
「Wikitude 」。スマートフォンを通して見た風景上に、その場所に関する情報がオーバーレイされる

拡張現実かくちょうげんじつ、英: Augmented Reality 、オーグメンテッド・リアリティ、 ARとは、人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉。

英語の Augmented Reality の日本語訳であるため、それを日本語発音した「オーグメンテッド・リアリティ」や省略形の AR も用いられる。また、拡張現実感 ( かくちょうげんじつかん ) 、強化現実 ( きょうかげんじつ ) 、増強現実 ( ぞうきょうげんじつ ) とも言う。似た言葉に複合現実 (MR) がある。

概要 [編集]

拡張現実は仮想現実 ( バーチャルリアリティ = VR) の変種であり、その時周囲を取り巻く現実環境に情報を付加・削除・強調・減衰させ、文字通り人間から見た現実世界を拡張するものを指す [1]





提示される環境の主体が現実環境であることから、現実環境における作業支援がその応用分野として期待されている。例えば、道案内情報の提供、航空機やコピー機のメンテナンスを行う技術者に対する技術情報提供、医療分野における手術支援 [2] に向けた情報提示などの応用研究が行われている。

一般消費者向けのサービスを作るためによく行われている手法に、 ARToolKit などの画像認識ルーチンを利用して、 2 次元コードパターンや静止画など (「AR マーカー」などと呼ばれる ) をデジタルカメラで撮影すると、それをマーカーとして映像にマッチムーブした 3DCG アニメーションがリアルタイムで合成表示されたり、静止画に合ったコンテンツが表示される物がある。

歴史 [編集]

拡張現実と同様のアイデアは、劇作家のライマン・フランク・ボームによって 1901 年に初めに述べられた。彼は、現実世界に創作されたデータを重ね合わて表示する「キャラクター・マーカー」という電子デバイスを考案した [3]

映像撮影技師の en:Morton Heiligは1957–62 年にかけて「センソラマ」というシミュレータを開発し特許を取得した。これは映像と音響と振動と香りを模擬するシステムであった [4]

また AR を実現するデバイスが実際に開発された事例として、 1966 年のアイバン・サザランドによる「ヘッドマウントディスプレイ」の発明などがなされてきた。

1975 年には en:Myron Krueger によって、ユーザーが仮想物体とやりとりできる「ビデオプレイス」というシステムが初めて開発された。

1989 年、「仮想現実」 (VR) という言葉が en:Jaron Lanier によって作られ、初めての仮想世界で行うビジネスを作り出した。

「拡張現実」という名前は、 1990 年にボーイングの技術者である Tom Caudell によって付けられた [5]

1992 年に日本で子ども向けのバラエティ番組『ウゴウゴルーガ』の放送が開始される。リアルタイムに制御される CG キャラクターと出演者が対話する形式のシリーズ番組の先駆的事例である。

1992 年にアームストロング空軍研究所の L.B. Rosenberg は機能する AR システムとしては最初期のものである「 Virtual Fixtures 」を開発し、デモンストレーションを行った [6] [7]

1992-93 年に、 AR システムのプロトタイプ「 KARMA 」の有名な論文が発表された [8]

2000 年、 Bruce H. Thomas は初の屋外携帯 AR ゲームである「 ARQuake 」をウェアラブル・コンピュータ国際シンポジウムで発表しデモンストレーションを行った。

このように、一部のエンターテイメント向け試作機を除けば、軍事産業や自動車・航空機製造産業で主に利用されてきた AR だが、 2000 年代に入り携帯端末の普及に伴い一般消費者向けサービスへと利用されるようになった [9]

日本では 2007 年以降一般にも知られるようになった。同年に AR 技術を応用した初めての市販ゲーム「 THE EYE OF JUDGMENT 」が発売された。

2008 年、スマートフォンで AR を活用した初の一般向け位置情報アプリケーションである「 Wikitude 」がリリースされた [10] [11]。日本では GPS の位置情報を利用する「セカイカメラ」が 2009 年にリリースされた。

2010年8月27 日にリリースされた日本の携帯電話 ( フィーチャーフォン ) 用プラットフォームである「 AR3DPlayer 」は、 2 次元バーコードの QR コードをそのまま QaR マーカーとして認識するトラッキング・システムを実装していた。カメラや GPS 、加速度センサなど各種センサによって携帯電話の位置や向きをトラッキングすることで、正しい位置と向きに画像を表示するシステムは AR の実現のために重要な技術である。 AR 用のトラッキングのための画像認識ライブラリは 1999 年にリリースされた「 ARToolKit 」などから利用することができ、 2003 年には Dieter Schmalstieg および Daniel Wagner によって携帯電話・ PDA 向けで初のマーカー・トラッキング・システムが開発されていた [12] 。アジアでは QR コードが携帯電話による画像認識マーカーとして普及していたため、 AR のマーカー・トラッキングにも用いられるようになった。

AR を使った作品の例としては ni_kaのAR  [13][14]

2013 年、 Google による拡張現実ツール「 Google Glass 」のベータ版のテストが始まり、この製品向けの様々な拡張現実アプリケーションがサードパーティーにより実装されてきている。眼鏡型および時計型コンピュータは、スマートフォン以降のウェアラブル・コンピュータ ( 身に付けられるコンピュータ。持ち運びできるモバイル・コンピュータの次に来る流れとして注目されている ) の本命と見なされている。

2016 年、 AR 特化型ニュースメディア「 GET AR 」が誕生した。

米国 Niantic 社により、世界各地で Pokémon GO( ポケモン ゴー ) が発表された。

2016年11月30 日に、エプソン販売株式会社から AR 対応のスマートグラス、 EPSON MOVERIO「BT-300 」を発売。独自開発の有機 EL ディスプレイを採用し、軽量化、高輝度、高画質化まで実現している。

用途 [編集]

医療 [編集]

手術時に拡張現実により体内の臓器を投影する手法が開発中 [15] [16]

軍事 [編集]

IHADSS から暗視画像が表示される

以前から AH-64 アパッチには暗視装置の画像を表示する AN/AAQ-11 が搭載されていた。

軍事演習のために拡張現実を利用した XARMEX というシステムが開発中 [17]

ポピュラーカルチャーにおける拡張現実 [編集]

AR を利用する具体的なビジョンは「スタートレック」などの SF に現れてきた [18]

日本における AR 技術周知のきっかけのひとつとして、 "拡張現実に類似したツール" が登場するアニメ「電脳コイル」 (2007) の存在を挙げる声もある [19] 。ただし、電脳コイルに登場する拡張現実は、実際の AR 技術と直接の関係はない。

また、同作品以前にも "拡張現実に類似したツール" が登場するアニメ・漫画は数多く存在する。例えば「ドラゴンボール」に登場する、相手の戦闘力を見ることの出来る片眼鏡形の表示装置「スカウター」なども拡張現実の一種と言える [20]

このように、 SF 

出典 [編集]

  1. ^ Ronald T. Azuma, A Survey of Augmented Reality, Teleoperators and Virtual Environments 6, 4 (1997), 355-385.
  2. ^ “Augmented Reality: OsiriX surgery”. WIRED (雑誌). (2010年8月21 日). http://www.wired.com/beyond_the_beyond/2010/08/augmented-reality-osirix-surgery/ 
  3. ^ Johnson, Joel. “The Master Key”: L. Frank Baum envisions augmented reality glasses in 1901 Archived 2013年1月12 日, at Archive.is Mote UND Beam 10 September 2012
  4. ^ http://www.google.com/patents? q=3050870
  5. ^ Tom Caudell. Ece.unm.edu. Retrieved 9 June 2012.
  6. ^ L. B. Rosenberg. The Use of Virtual Fixtures As Perceptual Overlays to Enhance Operator Performance in Remote Environments. Technical Report AL-TR-0089, USAF Armstrong Laboratory, Wright-Patterson AFB OH, 1992.
  7. ^ L. B. Rosenberg, "The Use of Virtual Fixtures to Enhance Operator Performance in Telepresence Environments" SPIE Telemanipulator Technology, 1993.
  8. ^ Wellner, Pierre. “Computer Augmented Environments: back to the real world”. ACM. 2012年7月28 日閲覧。
  9. ^ 拡張現実 (AR) はモバイルへ : 各種プロジェクトを紹介
  10. ^ Simon Perry (2008年10月23 日). “Wikitude: Android App With Augmented Reality: Mind Blowing”. digital-lifestyles.info. http://digital-lifestyles.info/2008/10/23/wikitude-android-app-with-augmented-reality-mind-blowing/2008年10月23 日閲覧。 
  11. ^ Daniel Wagner (2009年8月6 日). “History of Mobile Augmented Reality”. Institute for Computergraphics and Vision. https://www.icg.tugraz.at / ~ daniel/HistoryOfMobileAR/2009年8月6 日閲覧。 
  12. ^ Wagner, Daniel (2009年9月29 日). “First Steps Towards Handheld Augmented Reality”. ACM. 2009年9月29 日閲覧。
  13. ^ 「AR 技術による喪の空間の創造  ni_kaのAR 詩について」『 DOMMUNE OFFICIAL GUIDE 河出書房新社BOOK2』 2011 年  p49-50
  14. ^ 「ni_ka の「 AR 詩」」『 Web Designing』2012年6 月号  マイナビ p43
  15. ^ 身体スキャンにより手術を支援する AR - 医療での拡張現実技術利用イメージ - InsideOut. SamGMU Augmented reality project.
  16. ^ 3D 拡張現実と臓器立体モデルによる Robot 手術 Navigation - YouTube
  17. ^ XARMEX
  18. ^ Augmented Reality’s Path From Science Fiction to Future Fact
  19. ^ 『AR のすべて - ケータイとネットを変える拡張現実』 日経 BP、2009 年、 10 頁。 ISBN 978-4822210830
  20. ^ 川田十夢  AR 三兄弟 (2009年10月5 日). “これなら分かる AR( 拡張現実 )”. @IT (ITmedia). http://www .atmarkit.co.jp/fwcr/design/tool/ar01/01.html 2009年10月11 日閲覧。 

関連項目 [編集]

AR デバイス [編集]

AR を使ったゲーム、アプリケーションおよびサービス [編集]

AR の登場する作品 [編集]

〈harmony 〉

AR 専門ニュースメディア「 GET AR 」の記事一覧 [編集]